迷色まくるの巡礼の日々

迷色まくるの巡礼の日々

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川のほとりに立つ者は 寺地はるな 感想

主人公の清瀬(女性)とその恋人松木(男性)。2人の周りにはそれぞれ障がい者がいるが、その接し方は対照的。

清瀬は、発達障害の同僚の空気を読めない行動に、いつも感情を乱され疲弊している。
一方の松木は、識字障害である親友を心の底からリスペクト。障害のことを「誰にも言わないで」という親友との約束を頑なに守り通す。しかし、その親友との約束のおかげで、清瀬に浮気を疑われても説明できず、2人の仲は違えてしまった。

そんな折、松木は不可解な事故によって入院した。病院で昏睡状態の松木。事故に納得ができず事故の真相を探っていく清瀬は、知らなかった松木の尊敬すべき人間性について触れることになる。自分の無理解のために疑ってしまった松木への申し訳なさと自分のふがいなさから清瀬は動き出す。うっすら感じていた世の中の『常識』への疑いと『常識』の盲信による他者への無理解。そこに気付き『他者へ寄り添う』という新たな行動指針を生み出す。清瀬の成長が頼もしかった。

本作の大きなテーマである『常識』。その理不尽さ。その影響をもろに受ける弱者の生きにくさ。『常識』を疑おうとせず、囚われ、他人にも強要する現代人。違和感に気付いていたとしても、権力や同調圧力に抗うことはしない。自分にも心当たりがあり、ハッとした。自分の周りにも少なからず常識に苦しめられている人たちがいる。自分は彼らに寄り添っているだろうか。知らず知らずのうちに『常識』を押し付けてはいないか。見せかけの思いやりを与え、見返りの感謝を強要していないか。

家族や友達など身近な人について、本当に相手を理解している人は少ない。どちらか、もしくは双方の立場による『常識』を押し付け、不快な思いをしていることは多いように思う。同僚など距離のある人はなおさらのこと。まずは身近な家族、友達から、相手の立場を尊重しあいながら深く話し合うことが大切だと思う。違う意見も尊重し、ちゃんと話を聴いていこう。

そして、そろそろ僕たちは『常識』に抗ってもいいのではないか。おかしいことはおかしいと声をあげていい。空気を読めない行動に映ろうとも、他者へかけることばや行動について、本当に相手に寄り添ったものかどうか、よく考えていきたい。

最後に。僕も他者に対して願いたい。明日がいい日でありますように。